「昨日はオリンピックを見て寝不足なので、今日は休みます。給料はいらないので欠勤でいいです」 「始業前に連絡したから無断欠勤じゃないですよね?処分は受け入れません」
従業員からこのような連絡が来た時、経営者様や人事担当者様はどのように対応されていますか? 「本人が給料はいらないと言っているし、仕方ないか…」と諦めてはいませんか?
実は、労働契約の原則に立ち返れば、会社はもっと毅然とした対応が可能です。 今回は、従業員の「身勝手な欠勤」や「連絡の取れない無断欠勤」に対して、会社が取るべき正しい初動対応とリスク管理について解説します。
1. 「給料はいらないから休む」は通用しない
まず大前提として、労働者には「労務提供義務」があります。 雇用契約とは、「労働者が働き、会社が賃金を支払う」という約束です。法律や就業規則で認められた休暇(有給休暇など)を除き、労働者は自分の都合や気分で勝手に「今日は働かない」と決めることはできません。
たとえ従業員が「今日の分の給料はいりません(ノーワーク・ノーペイ)」と言ったとしても、会社は以下のように返答して問題ありません。
「そのような理由での欠勤は認めません。出勤してください。出勤しない場合は業務命令違反として、査定への反映や懲戒処分の対象とします」
会社は正当な理由のない欠勤を拒否し、出社を命じる権利があるのです。
2. 「連絡したから無断欠勤じゃない」の落とし穴
次に多いのが、「始業前に連絡を入れたのだから、無断欠勤ではない。だから処分されるいわれはない」という主張です。
確かに「無断」ではないかもしれません。しかし、「正当な理由のない欠勤」であることに変わりはなく、これは立派な契約違反(債務不履行)です。
会社としては、「連絡があったからOK」ではなく、「理由は正当ではないため、欠勤自体が問題である」という姿勢を崩してはいけません。
【要注意】就業規則の「言葉」を確認してください
自社の就業規則の懲戒事由を見てみましょう。 もし**「『無断欠勤』が〇日続いたとき」**としか書かれていない場合、連絡さえあれば処分できないリスクが生じます。
- 改善策:「正当な理由のない欠勤」も処分の対象とする、あるいは「正当な理由と認められない場合は、連絡があっても無断欠勤とみなす」といった規定への見直しをお勧めします。
3. 連絡が取れない!その時会社がやるべき初動対応
退職勧奨の直後や、トラブルの後に従業員が出社せず、連絡も取れなくなるケースがあります。 「もう辞めるつもりだろうし、放っておこう」と考えるのは危険です。後々、「解雇されたと誤解していた」「会社から連絡がなかった」と争われるリスクがあるからです。
連絡が取れない場合、以下のステップで対応しましょう。
① 勝手に「有給消化」にしない
給料が出ないとかわいそうだからと、会社の判断で勝手に有給休暇を充てるのはNGです。 本人の申請がないのに有給処理をしてしまうと、後で「正当な休暇だった」ことになり、欠勤を理由とした処分ができなくなってしまいます。
② 連絡の証拠を残す
電話に出ない場合、メールやSMS(ショートメール)で「連絡をください」と送信し、その画面をスクリーンショットで保存します。 「会社は心配して連絡を取ろうとした」という証拠が重要です。
③ 身元保証人への連絡・自宅訪問
2日以上連絡がない場合、トラブルや病気の可能性も考慮し、身元保証人に連絡を取りましょう。 それでも安否が不明な場合は、自宅を訪問し、インターホンを鳴らしたり電気の点灯状況を確認したりします(※住居侵入にならないよう、外観の確認に留めます)。
4. いよいよ解雇・退職扱いにする時の注意点
長期間連絡が取れず、出社もしない場合、最終的には雇用契約の終了(退職や解雇)を検討します。
「行方不明による自然退職」規定の活用
就業規則に「行方不明となり14日以上連絡が取れない場合は自然退職とする」といった規定があれば、解雇手続きよりもスムーズに契約終了できます。 ただし、適用するには前述の通り「あらゆる手段で連絡を試みたがダメだった」という実績作りが不可欠です。
解雇通知を送る場合の実務テクニック
規定がなく「解雇」を選択する場合、相手に解雇通知が到達する必要があります。居留守を使われている場合は、以下の方法が有効です。
- レターパックライトを活用: ポスト投函で追跡記録が残ります。
- 封入作業を動画撮影: 「中身が入っていなかった」という反論を防ぐため、通知書を入れて封をするまでをスマホ等で撮影しておきます。
- メールでも送付: PDF化した通知書をメールでも送り、あらゆる手段で伝えようとした証拠を残します。
まとめ
従業員の欠勤対応は、初期対応を誤ると「言った言わない」のトラブルに発展したり、本来できるはずの処分ができなくなったりします。
- 身勝手な欠勤は毅然と拒否する
- 就業規則の「無断欠勤」の定義を見直す
- 連絡不能時は、必ず「探した証拠」を残す
この3点を意識して対応しましょう。
当事務所では、トラブルを未然に防ぐための就業規則の点検や、問題社員への具体的な対応アドバイスを行っております。「連絡が取れない社員がいる」「就業規則が今のままで大丈夫か不安」という経営者様は、お気軽にご相談ください。
