「勤務時間中にネットサーフィンばかりしている社員がいる」 「何度注意してもやる気がなく、ミスを繰り返す」 「改善の見込みがないので辞めてもらいたいが、トラブルになるのが怖い」
経営者様や人事担当者様から、こうした**「仕事をしない社員(ローパフォーマー)」**に関するご相談をよくいただきます。
目に余るサボり癖や勤務態度の悪さを見ると、「すぐにでも解雇したい」と思われるのが人情です。しかし、日本の労働法制において、準備なしの「解雇」は極めてリスクが高いのが現実です。
今回は、仕事をサボる社員ややる気のない社員に対して、会社としてどう対応すべきか、リスクを回避しながら円満な解決(合意退職や改善)に導くための具体的なステップをご紹介します。
1. 裁判所は厳しい!「サボり社員」でも簡単には解雇できない
まず、実際の裁判例を見てみましょう。
ある会社で、勤務中にほとんど仕事をせず、1日平均7時間以上も趣味のサイト(野球やゴルフなど)を閲覧していた部長職の社員がいました。会社はこの社員を解雇しましたが、裁判所は**「解雇無効(会社側の敗訴)」**と判断しました。
なぜ、これほど酷い勤務態度でも解雇が認められなかったのでしょうか?
理由は主に以下の2点です。
- 書面による注意指導や懲戒処分を行っていなかったこと
- 改善の機会(降格や配置転換など)を十分に与えていなかったこと
つまり、裁判所は「会社は本気で指導しましたか?」「改善のチャンスを与えましたか?」というプロセスを非常に重視します。口頭で何度か注意した程度では、「指導を尽くした」とは認められないことが多いのです。
2. 目指すべきは「解雇」ではなく「合意退職」
解雇が無効と判断されると、バックペイ(解雇期間中の賃金支払い)など、会社は多額の金銭的損失を被ります。また、社員が職場に戻ってくることになり、組織への悪影響も計り知れません。
そのため、実務上のゴールとしては、リスクの高い「解雇」ではなく、話し合いによる**「合意退職」**を目指すのが賢明です。
しかし、ただ「辞めてほしい」と伝えても、問題社員は簡単には応じません。「会社はどうせ大したことはできない」「働かなくても給料はもらえる」と高を括っているケースが多いからです。
この**「認識のズレ(甘え)」を修正し、本人が退職を受け入れる土壌を作る**ことが、解決への鍵となります。
3. 「辞めない社員」の意識を変える!効果的な指導法
では、どうやって本人の意識を変えればよいのでしょうか? ポイントは、**「徹底した管理と指導」**を行い、「今のままの働き方では、この会社にいられない」と肌で感じさせることです。
そのための最強のツールが**「詳細な業務日報」**です。
普通の日報では意味がない
「今日は〇〇をしました」程度の簡単な日報では効果がありません。以下のような項目を設けた、特別な日報を作成させましょう。
- 5W1Hでの具体的報告: 「いつ」「どこで」「誰と」「何をしたか」を詳細に書かせる。
- 時間管理: 何時何分から何時何分まで、何の業務をしたか。
- 相手の特定: 社内・社外問わず、コミュニケーションを取った相手の実名を記載させる(裏取りができるようにするため)。
日報を活用した指導サイクル
- 毎日提出させる: 業務終了時に必ず提出させます。
- 毎日フィードバックする: 上司や指導担当者が必ず目を通し、「この時間は何をしていましたか?」「この成果物は水準に達していません」と、赤ペンを入れるように毎日コメントを返します。
- 定期面談を行う: 2週間に1回程度、面談を行い、改善していない点を指摘し続けます。
このプロセスを徹底することで、サボる隙をなくし、「会社は本気だ」「いい加減な仕事は許されない」という事実を突きつけます。 多くのケースでは、この厳格な管理体制に居心地の悪さを感じ、社員自ら退職を申し出るか、あるいは劇的に業務態度が改善するかのどちらかになります。
4. トラブルを防ぐ対応の5ステップ
最後に、具体的な対応手順を整理します。
- 【業務の明確化】 会社が求める業務内容や水準を明確にします。「何をすれば評価されるのか」が曖昧なままでは、指導の効果が出ません。
- 【指導体制の構築】 誰が指導を担当するかを決めます。一人に任せず、チームで対応することも有効です。
- 【本人への通告】 対象社員を呼び、「現状のパフォーマンスでは問題があること」「改善のために徹底的に指導すること」を伝えます。
- 【日報指導・面談の実践】 前述の「詳細な業務日報」を活用し、日々の指導と記録(証拠化)を積み重ねます。
- 【懲戒処分・退職勧奨】 指導しても改善しない場合は、就業規則に基づき懲戒処分を行います。この段階までくれば、本人も「会社にはいられない」と認識し始めているため、退職勧奨を行えば合意に至る可能性が高まります。
まとめ
仕事をしない社員への対応は、感情的になって「クビだ!」と告げるのが一番危険です。 遠回りに見えても、**「業務の明確化」と「記録に残る形での徹底した指導」**を行うことが、結果として会社を守り、最短での解決につながります。
当事務所では、問題社員対応のための「業務日報のひな形作成」や「指導面談の進め方」についてもサポートを行っております。 「指導しても暖簾に腕押しで困っている」「具体的な日報の書き方を知りたい」という経営者様は、トラブルが大きくなる前にぜひ一度ご相談ください。
